1. 「生き方としての農」の指導者
2. 「いただき繕」の指導者
3. 21世紀の農村の普遍的教養人、知性的農者の教養




生きる智慧は、生命に対する暖かい眼光から出るものであると、われわれは確信しています。

生を愛するには、『農』への造詣の確かさが要ります。なぜなら、『農』の営みには、奥の深い『哲学』、もしくは『美学』があり、単なる食糧生産の仕事という以上の、心の年齢を刻んでいく楽しみがあるからです。そして『農』の営みは、人間の一切の営みの根底であり、文化の土台と言えるべきことです。誰だって、生き生きとした輝く生活をしたい、『生きがい』のある仕事をしたいと思うでしょう。しかし、人は自分の『生きがい』を生涯にわたって自分で築いていくしかありません。『生きがい』は、今日の若者の就職の選択において、キーワードになりつつあります。もちろん、大地についてさえいれば道を踏み誤ることがないと言うのではありません。

毎日、農作物と誠心を込めた付き合いによって、対象を貴い生命として体知できるようになります。そして、それを体験した人でなければ味わえない、生命への畏敬の心が育っていくでしょう。

このコースは、現代社会の中に暮らし育った人が、自分の『生きがい』を生涯にわたって自分で築いていく基礎力、つまり『農』への造詣を深める機会を与えることを目的とします。自分の生命と耕す土の肌とが不離一体のものだとする農村と農民の考え方が根こそぎ変わっていく今日の農村に、希望をもたらす真の農者、晴耕雨読の生活を通して、生活の芸術化を実践する真の農者の育成を目的としています。

『論語』に、「子曰く、弟子、入りては則ち考、出でては則ち悌、慎みて信あり、汎く衆を愛して仁に親しみ、行って余力あれば則ち以て文を学べ。(修行中の若者は、家庭では孝行し、社会に出ては奉仕につとめ、注意深くして約束を守り、多くの人々と親睦する中でも誠実な人を選んで昵懇(じっこん)にし、実践した上の余力をもって教養を高めるがよい)」(学而第一)という先賢の教えがありますが、こうした教えを日々の生活の中で実践してゆく農者の育成を目標とします。

また、このコースでは、アメニティ・ムーバー(大地に根ざした生きがいのあるライフスタイル、生活の快適性を求めて田園へ移住する人)となりたい人が、立派な農者として自立できる実践と理論を学び、また都会で培った能力や経験を活かし、さまざまなコミュニティ・ビジネスの花を咲かせて、農村再生の担い手となるように教育します。つまり、豊かな農村生活の再生を、美しい農の再生で果たすと言うミッション(イギリスのクラウンドワーク・トラストが掲げる理念のように。)と、こうしたミッションを創造的なコミュニティ・ビジネスを通して実現するための理論と実際の教育です。

欧米では、1990年代の10年間で近代以降初めて人口移動の流れが都市から農村へ逆流する現象が起きました。その期間中、約220万人が足しげく農村に通うだけに留まらず、生活拠点を田園に移したと言われます。
こうした理論と実際の教育は、日本独自の農村景観と創造的な農村ライフスタイルの融合を体験させるルーラル・ツーリズム、新鮮かつ安全な野菜や自家製造の味噌、漬物などの魅力的な食材を活用した「おふくろの味」のレストランの経営、それらの産地直送販売、伝承文化を生かしたクラフトの商品化等を促し、今まで単純な作物供給地だった農村の姿を多元化し、21世紀型のサービス業、伝承文化が創出される美しい田園空間へと変容させるでしょう。

さらに、大地に根ざしたライフスタイルを願う大都会住民の田園回帰願望と、やりがいある仕事・楽しみを求める農村居住の年寄りたちの願い。
それらが、響きあううねりを、新しいコミュニティ・ビジネスの創出の機会と捉える、理論と実際も学びます。

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「食事の心の乱れは、魂の汚れの始まりである。」
「魂の汚れが進むと体の汚れ(病気)が始まる。」

『いただき繕』とは、他の生命(食物)をいただいて、欠けたところがないように心身を整える、心身の弱いところを強くする、心身のこわれた部分を治す行い、つまり食事を行ずる誠心です。『いただき繕』は、繕性(性質の欠点をなおしてよくする)の境涯から始まり、繕補(つくろい補う)の境涯を経て、繕完(つくろって完全にする)の境涯を目指します。

今は形骸化しつつありますが、遠い昔から東アジアの文化には、食事という行為を他の生命をいただける畏れと申し訳ない心情(謙虚)で受け止めた素晴らしい伝統がありました。それは東アジアの文化に限らず、すべての文化に存在したはずの普遍的価値ですが、たまたま東アジアの文化に濃く顕れた現象といえるでしょう。

東アジアの伝統的な食養論でもある“いただき繕(ITADAKI Zen)”の復活はすべての生命に対する畏敬の心の復活となるでしょう。

このコースでは、『自分たちの体は天地万物の助け(命)を借りて自分たちで治す』という先人たちの教えと、土地の風土に適合した食文化とを活かす現代の“いただき繕”の指導者(食医)の育成を目指します。

2025年の日本は、65歳以上の高齢化率が27.3%で世界一になると予想されています。全国民が介護不安の時代を迎えようとしているのです。今こそ東アジアの生民伝承の予防医学でもある『いただき繕(食養論)』についての見直しが必要な時だと、われわれは確信しています。
現在、人の死亡原因の65%は、食生活からくる生活習慣病といわれます。WHO(世界保健機関)は、世界中の健康で長寿の地域を調査して、健康長寿のためには、その地域の伝統的な食生活を守っていくことが大切だと報告しています。医と食が深く結びついていることは、もはや世界的な常識と言えるでしょう。『医食同源』という言葉の重みを全世界が認識しはじめたのです。

現代医学では、長い間『食べ物=治療』という、考えてみれば至極当然の因果関係を殆ど軽視する傾向がありました。『医食同源』や、『薬食同源』という言葉は、現代医学の考え方には馴染まないものでありました。

今日、『いただき繕(食養論)』や『食医(いただき繕の指導者)』という言葉は、ほぼ死語になっていますが、東アジアにおけるその歴史は非常に古く、近代栄養学とは全く異なる思想に裏付けされています。つまり、『いただき繕(食養論)』では、人間と自然(植物)の関係を生命と生命の関係と捉え、食事を、生命が生命を助ける事と理解しています。

また、『いただき繕(食養論)』では、病気を治すというより、病気にならないための食事を重視します。慢性的な病気の治療法を記した医書『金匱要略』には、「上工は未病を治す」(優れた医者は、未だ病んでいない臓器を病む前に治す)とあり、『食医(いただき繕の指導者)』の重要性を強調しています。

『食医』とは、『周礼』という、古典に見える用語ですが、『周礼』では、医者を四つに分類して各々の役割を説明しています。つまり、『食医』『疾医(内科医)』『瘍医(外科医)』『獣医』がそれです。その中で、食事指導を通して病気を予防し、健康を維持かつ増進させる医者である『食医』が最も優れた医者として人々から尊敬されたと記述しています。

東アジアの文化圏における『いただき繕(食養論)』に関する最古の文献である『黄帝内径素問』には、次のような記述があります。
「薬補不如食補、千補万補不如食補」
これは、「薬を飲んで丈夫になるより、食物で健康になるほうが健全である。いくら薬を服用しても、やはり食にはかなわない。」という意味です。

また、『神農本草経』という古典は、薬を三つに区別しています。すなわち、上品の薬とは、毒が無いので長期運用が可能な薬であり、中品の薬とは、毒の有無を注意深く調べて適切に用いるべき薬だと説明しています。また、下品の薬とは、毒が多いから長期運用が不可能な薬を指しています。こうした観点から見ると、上品の薬とは、日常の食物であることが解かります。

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* 農哲学1(Agricultural Philosophy) : 東アジアの先人たちが農の営みをどのように理解し、また、それをどのように生きた哲学まで昇華させたかを学びます。

* 農哲学2(Agricultural Philosophy) : 17世紀から19世紀まで(江戸時代)儒教を土台としつつも、グローバルな視野、宇宙に向かって開かれた視野に立って、自らを厳しく律しつつ、民の厚生、利用につとめた一群の学者たち(実心実学者)の思想から農文化の原点を学びます。

* 農具と生活労働 : 先人たちが農の営みにおいて、自分自身の身体のように大切にした農具の智慧を、実践的な生活労働を通して学びます。 
『道具を使うことは道具に貴方の生命力を注ぎ、その道具を成す生命力よりも高次元のものとする瞬間である。道具とは仕事の為の手段ではなく、自分自身の生命力を拡大する生命の同伴者である。どんな心構えで道具を使うべきか、そのとき、自分の身体はどんな反応をするのか。その一つ一つを作業の中で確認しなさい。気付きがふっと突然やってくる瞬間がある。これを貴方の次の糧としなさい。』 (農哲学者の言葉)

* 本草学(Oriental Medicine) : 「自分たちの体は天地万物の助け(命)を借りて自分たちで治す」という「食養論」の基礎となる「本草学」を『神農本草経』『本草綱目』などの古典を通して学びます。

* 農法総論 : 農法を、『農という産業』の技術でではなく、『農という生き方』として捉え直す視点で、江戸期の農書の農法から、現代の自然農法までを体系的に学びます。

* 農業アメニティ総論:過疎化した農村には、大きな社会発展の種が植わっています。人間らしい本来の豊かさを実現させるために大地に根ざしたライフスタイルを求める田園回帰願望の人々と、余生のやりがいある仕事・楽しみを求める農村居住の年寄たちとの願いが響きあう新しいうねりをどのように農村再生の原動力へと転換できるかを模索します。

そのほか <各地域の伝統に応じて学びます。>
*漢方医学と代替医学
*東アジアの食文化と食養論
*農業と暦
*風土と風水
*農の原景と生活芸術
*食のグローバル化とフードシステム
*風土建築(ログハウス・石家づくりなど)
*風土造景(日本庭園づくりなど)
*民芸と地域文化     

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